社内に蓄積された契約書や帳票、PDFなどのデータをAIや業務システムに連携できていない場合、その要因の多くはデータが「非構造化データ」の状態のままであることにあります。
この記事では、非構造化データの定義や具体的な構成例、システム処理が難しい理由、そして構造化データを構築する手法とそのメリットについて解説します。
非構造化データとは、あらかじめ定義された形式や規則に沿って整理されていないデータ構造を指します。表計算ソフトやデータベースのように、行・列・フィールドによって管理されている「構造化データ」とは異なり、情報の配置や記述ルールが文書ごとに異なっている点が特徴です。
構造化データが「決まった場所に決まった形式の値が入る」状態であるのに対し、非構造化データは「情報自体は含まれているものの、システムが特定の項目を自動的に識別して取り出す仕組みが整っていない」状態といえます。
企業の日常業務で発生するデータの多くは、この非構造化データに該当するものです。実務において代表的な例として、以下の項目が挙げられます。
これらのデータは日々の業務プロセスの中で蓄積されていきますが、人が目視で扱う分には問題なくとも、そのまま基幹システムやAIモデルにインプットして自動処理させるには不向きな状態となっています。
非構造化データをそのまま生成AIやシステムに読み込ませようとすると、精度や信頼性の面でさまざまな課題が生じます。主な2つの理由について解説します。
非構造化データには、文書の出典やバージョン、更新日、作成者、参照権限といった文脈情報がシステム的に整理されていません。そのため、AIは複数の文書にまたがる情報の新旧や正誤を判別することが難しく、古い契約条件や修正前の数値をそのまま回答に使用してしまう可能性があります。
判断根拠を追える状態にするには、事前に構造化を行って「どの文書の、どの項目か」を明確にする手順が欠かせません。
スキャンされた帳票や複数ページにわたるPDFは、レイアウトの崩れや文字の重なり、フォーマットのばらつきが生じやすい状態です。こうした文書を事前のデータ整形なしでAIに処理させた場合、項目の読み飛ばしや数値の誤認識、存在しない情報を生成するハルシネーションを誘発する原因になります。
前処理として文書を構造化データへ変換することにより、AIに渡すデータの品質を高め、回答精度と再現性を引き上げられるようになるでしょう。
構造化とは、非構造化データから必要な情報を抽出し、項目や値、関連性などが定義されたデータ形式(JSON、CSV、データベースなど)に変換する処理を指します。主なアプローチは以下の3種類です。
担当者が文書の内容を読み込み、必要な項目を手動で転記・整理する手法です。目視確認による確実性がある一方で、処理件数の増加に伴って工数が膨らみ、入力ミスや抜け漏れのリスクも高まります。
定常業務として継続するには負荷が大きく、繁忙期に対応が追いつかなくなる懸念も残るでしょう。
フォーマットが完全に固定された帳票であれば、あらかじめ定義したルールやテンプレートに基づいて自動抽出を行う運用が組めます。定型の請求書や申込書には適していますが、レイアウトが異なる文書や記載ゆれが多い帳票には対応しにくく、手作業による例外処理が発生しがちです。
インテリジェントドキュメント処理(IDP)などの技術を導入し、非定型の文書を分類、抽出、検証、システム連携まで一貫して処理する手法です。フォーマットのばらつきや手書き文字に対しても柔軟に判別できるため、人手による例外処理を抑えながら運用を継続できます。
非構造化データを構造化することで、実務において以下のようなメリットを得られます。
構造化されたデータは、単なるテキスト検索だけでなく、過去の契約内容との自動照合や部門をまたいだデータ分析にも活用が可能です。さらに、担当者が変わっても過去の判断根拠をデータとして追跡できるため、業務の属人化を防ぐ効果も見込めます。
日常の業務フローにおいて、非構造化データは人が目視で処理することはできても、そのままAIやシステムに読み込ませた場合は誤読やハルシネーションが起きやすく、自動化の成果につなげにくいといった特徴があります。
こうしたデータも、あらかじめ構造化を行うことで検索や照合、AI処理に適した形へと変換可能です。書類の分類からデータ抽出、整合性の検証、そして後続システムへの連携にいたる一連のプロセスを組み立てることで、これまで人手に頼っていた文書処理をシステムで扱える状態へと移行できるでしょう。
この一連のプロセスをAIでまとめて担い、非構造化文書を業務データへと変換する仕組みが「インテリジェントドキュメント処理(IDP)」です。これまでAI活用が難しかった非構造化データを、実務で使える構造化データへと効率的に整えられます。
当メディアではインテリジェントドキュメント処理の仕組みについてイラストでわかりやすく解説。ぜひご覧ください。
ここでは、法務・経理・調達それぞれの部門向けにおすすめのインテリジェントドキュメント処理ツールをご紹介。日本法人を持つメーカーの中から、各部門の文書処理に活用しやすい製品を調査しました。
過去の契約書をナレッジとして活用できておらず、毎回ゼロからレビューしている
PDFを条項・金額などの項目単位で構造化データに変換し、標準的なOCRの枠を超えて文脈を正しく理解。全文を人がレビューするやり方から「AIが絞り込み→人が最終判断」のフローへ切り替え、工数を削減可能。
データは外部AIの学習に使われる心配がなく、専用ナレッジに蓄積。自社データだけを対象に、AIが全契約を横断照合し、「違約金が相場より高い」などのリスクを自動特定。1件ずつ開いて確認する作業がなくなる。
月末・期末に処理が集中し、担当者の残業が常態化している
日本語の請求書に対応した事前学習済みAIモデルを搭載しており、テンプレート設定やAIの個別トレーニングは不要。導入直後から活用しやすく、請求書が集中する月末・期末でもスムーズに処理。
RPAツールやSAP・OracleなどERPとの連携機能を標準搭載。連携環境を一から構築する負担を抑えながら、抽出した請求書データを社内システムへそのまま自動登録できる。
品番や備考欄の特殊条件が書類によって異なり、人が読み解く手間が発生している
独自開発AIにより「この位置に品番がある」といった固定パターンに依存せず、帳票内の品番や特殊条件などを抽出。取引先ごとに形式が異なる書類でも、項目の位置や表記ゆれに対応しやすい。
レイアウトをテンプレートなしで視覚的に理解できるコンピュータビジョンにより、新しい帳票でも再学習・調整なしで処理を開始。サプライヤーが増えるたびに設定をやり直す運用負荷を軽減。