PDFや契約書など、実務で扱う文書の多くは人が目視で確認することを前提とした形式で保存されています。請求書のデータをシステムで自動的にExcelへ取り込みたい場合や、過去の契約書から必要な金額情報だけを抽出したい場合、データの形式が整っていないことが処理の妨げになるケースは少なくありません。
この記事では、構造化データと非構造化データの具体的な違いや、形式の定まっていないデータがシステム処理やAI活用においてボトルネックとなりやすい理由について解説します。
構造化データとは、あらかじめ定義された形式に沿って整理され、システムでの検索や集計が容易な状態のデータを指します。一方、非構造化データとは明確なデータ構造が定義されていないデータを意味し、ビジネス文書の多くがこれに該当するものです。両者の主な違いは以下の通りです。
| 比較項目 | 構造化データ | 非構造化データ |
|---|---|---|
| 代表例 | データベース、Excelの表、CSVファイル | PDF、Word文書、画像、メール、契約書、帳票 |
| データの形式 | 行・列・項目名が定義されている | レイアウトや書式が文書ごとに異なる |
| 検索・集計 | 条件指定により即座に抽出できる | 全文を読み込まないと内容を把握しにくい |
| システム連携 | APIやデータベースを介して直接渡せる | 事前のデータ変換なしでは取り込めない |
非構造化データの詳しい定義や具体例、データ活用の基盤を整えるメリットについては、以下のページで解説しています。
PDFやスキャン画像などの非構造化データをそのままAIに読み込ませた場合、どこにどのような情報が配置されているかをシステム側で正確に判別できず、事実とは異なる出力を生成するハルシネーション(誤認)を生む原因になります。経理部門の請求書や調達部門の発注書は発行元によって書式が異なるため、事前の構造化プロセスを踏まないと処理精度が安定しません。
判断ミスのない運用を行うためには、あらかじめ「取引先名」「日付」「金額」といった項目ごとにデータを切り分ける前処理の設計が必要となるのです。
非構造化データをシステムで扱える構造化データへと変換するアプローチには、主に以下の2種類の手法が挙げられます。
OCR(光学文字認識)を用いた手法は、読み取り位置があらかじめ固定されている定型帳票の処理に適しています。これに対し、AIモデルが文書全体のレイアウトや記述の文脈を解析して必要な項目を識別するIDPは、取引先ごとに書式が変わる請求書や契約書といった非定型書類の処理において対応力を発揮する仕組みです。
形式の定まらない非構造化データを構造化データへと変換して管理することは、各種業務システムへの連携やAI活用における体制づくりの起点となります。
まずは請求書や発注書、契約書といった対象となる書類を絞り込み、検索性の向上や入力業務の削減など実務上の目的を定めた上で、分類からデータ抽出、整合性の検証にいたる一連のワークフローを組み立てていくアプローチが有効です。
この分類・抽出・検証といった一連のワークフローを、AIでまとめて担う仕組みが「インテリジェントドキュメント処理(IDP)」です。非構造化文書を業務で使える構造化データへと変換する工程を一貫して自動化できるため、AI活用に向けた文書データ整備の土台づくりを効率的に進められます。
当メディアではインテリジェントドキュメント処理の仕組みについてイラストでわかりやすく解説。ぜひご覧ください。
ここでは、法務・経理・調達それぞれの部門向けにおすすめのインテリジェントドキュメント処理ツールをご紹介。日本法人を持つメーカーの中から、各部門の文書処理に活用しやすい製品を調査しました。
過去の契約書をナレッジとして活用できておらず、毎回ゼロからレビューしている
PDFを条項・金額などの項目単位で構造化データに変換し、標準的なOCRの枠を超えて文脈を正しく理解。全文を人がレビューするやり方から「AIが絞り込み→人が最終判断」のフローへ切り替え、工数を削減可能。
データは外部AIの学習に使われる心配がなく、専用ナレッジに蓄積。自社データだけを対象に、AIが全契約を横断照合し、「違約金が相場より高い」などのリスクを自動特定。1件ずつ開いて確認する作業がなくなる。
月末・期末に処理が集中し、担当者の残業が常態化している
日本語の請求書に対応した事前学習済みAIモデルを搭載しており、テンプレート設定やAIの個別トレーニングは不要。導入直後から活用しやすく、請求書が集中する月末・期末でもスムーズに処理。
RPAツールやSAP・OracleなどERPとの連携機能を標準搭載。連携環境を一から構築する負担を抑えながら、抽出した請求書データを社内システムへそのまま自動登録できる。
品番や備考欄の特殊条件が書類によって異なり、人が読み解く手間が発生している
独自開発AIにより「この位置に品番がある」といった固定パターンに依存せず、帳票内の品番や特殊条件などを抽出。取引先ごとに形式が異なる書類でも、項目の位置や表記ゆれに対応しやすい。
レイアウトをテンプレートなしで視覚的に理解できるコンピュータビジョンにより、新しい帳票でも再学習・調整なしで処理を開始。サプライヤーが増えるたびに設定をやり直す運用負荷を軽減。